学生レポートvol .3|【2023年9月号】鮎と地域を取り巻くひとたち

9月初旬、私たちは取材のため高知県四万十市西土佐を訪れていました。
取材に同行してくれたのは高知大学院1回生の柳原伊吹さん。
大学時代から「えひめ・こうち食べる通信」の取材・執筆に携わってくれています。
今回の記事は柳原さんが学んでいる「地域コミュニティ」について、西土佐での取材を通して感じたことをまとめてくれました。

インタビューを通して

西土佐の鮎の取材を通して、天然鮎を取り巻く人々は、地域のあり方や自分の人生の在り方について考えているのだと気づかされました。
また、西土佐にとって鮎は一種のアイデンティティーであり、本当に重要な要素であるのだと考えました。

林さんのお話を聞いて(道の駅よって西土佐駅長)
まず初めにお話を伺った道の駅よって西土佐駅長・林さんの天然鮎へのこだわりは、
店に並べる商品はたとえ近隣地域のものであっても、加工品であっても“天然鮎”であることを徹底するほどです。
その他にも鮎の生態などお話いただきましたが、特に印象的だったのは「川を食べよう」というメッセージ。
鮎が四万十川全体の状況について味や漁獲が変化する様子から四万十の自然そのものを体現している存在なのだという意味です。
また、鮎の生態系にこそロマンがあるというお話も伺い、鮎の“商品”としての魅力を語るのではなく、四万十川の“生きもの”としての鮎を大切にしたいのだという気持ちがびしびしと伝わってきました。
林さんは元々、四万十川西部漁業協同組合の組合長をされており、道の駅の駅長をする予定ではなかったといいます。
しかし、西土佐に道の駅ができる当時になり手がおらず、地域外の人に依頼しようという流れになった際に「地域の道の駅は地域の人がやらないと魅力が十分に伝えられないのではないか」という思いから就任したのだそうです。
こうした行動から、鮎への思いと同時に西土佐や四万十川全体を大切にしていきたいという思いを持った方だと感じました。

久保さんのお話を聞いて(鮎漁師)
次に、鮎漁師の久保さんからお話を伺いました。
農家との兼業で、漁期になったら鮎を釣りに目黒川や黒尊川といった四万十川の支流で友釣り漁をするのだそうです。
印象的だったのは、栽培する植物の収穫時期と鮎漁は同時期でもあるにもかかわらず両方こなしている点と釣りについて昔の親世代から釣り方を教わって以来ずっと釣りを続けているという話です。
特に釣りについては最盛期となる7月〜8月では兼業ではあるにも関わらず半分以上は川で釣りをされているとのこと。
見せていただいた写真フォルダには連日釣果を写真に収めており、天気の悪い日以外はほとんど漁をしているそうです。
加えて、取材後にも次の鮎釣りのためにおとりとなる鮎を調達するなど常に徹底して漁に向き合っていると感じました。

POINT|インタビューを通しての感想
①林さんの鮎への向き合い方が鮎を通じて四万十川全体への構想になっている事への驚き。
②鮎を通しての西土佐という場所への向き合い方(道の駅や食への取り組み)への感動
③漁師さんの兼業ではない漁業の生き方、漁への向き合い方の面白さ

 

コミュニティの特徴

鮎という魚への向き合い方
取材をして見えてきたのは、「鮎」という魚を通して独自の自然や人との向き合い方が形成されている場所ということでした。
西土佐の鮎は、道の駅含めて天然に対して強いこだわりを持って販売をしています。
また、天然鮎を提供することから、一般的な漁業のように専業で取り組む事は難しく、兼業で取り組む漁師さんによって鮎が漁獲されているとのことでした。

鮎を通した西土佐の文化
鮎の漁法として、四万十川では「火振漁」が現在でも残っています。この漁では、個人だけで行う事ができないために家族や近所の人々が協力してやっとできる漁だとか。
また個人で行うおとり鮎を使った「友釣り」という漁も存在しています。
これらの共通点は「親世代から受け継がれてきた方法や考え方がそこには存在している」ということでした。
そうした脈々と受け継がれてきた技術によって天然鮎の漁が現在も続けられています。

鮎を通した自然との繋がり
このように、西土佐の人々は鮎を通した生活文化が現在でも残っていますが、鮎を通して四万十川の生態系についても考える状況が生まれていました。
インタビューに答えてくださった林さん(道の駅よって西土佐駅長)は、四万十川の環境の変化によって鮎の味や漁獲高まで大きく変化してしまうと仰って
いました。
その上で、「四万十川に関係する海・山・川全ての環境が整わなければいい鮎にはならない」という意識が地域一帯に共通認識として根付いています。
鮎の漁獲だけではなく四万十川全体を視野に入れた生態系の調整について考えていることが、“最後の清流”と呼ばれる所以であり、天然鮎を絶やさないサイクルに繋がっているのだと実感しました。

鮎を通した人との繋がり
また鮎は、四万十川の伝統や生態系意外にも人同士の繋がりを育んでいました。
今回取材させていただいた漁師の久保さんの話からは、鮎を通して30年以上の付き合いとなる県外の知人がいるとおっしゃられていました。
また、林さん(道の駅よって西土佐駅長)も天然鮎を通して東京の豊洲市場の方と繋がることから西土佐の鮎の魅力を全国に伝えることができるようになっているとおっしゃっていた。
このように、西土佐では「鮎」を通じて文化、自然への理解、人との繋がりが生まれるコミュニティーが育まれていることが今回の調査の中で気づいた事でした。

POINT|鮎と四万十市西土佐の関係性
・鮎は徹底的に天然にこだわっている。
・鮎の漁獲は専業ではなく、兼業であること。
・鮎の伝統的な漁獲(火振漁)は一人ではなく大勢の力が必要になってくること。
・鮎を通して森の現状や海への影響などについて憂いている。
・問題意識に対して、鮎の収穫だけの視点だけではなく、鮎を通して四万十川全体の保全を目指している。
・鮎漁師さんの話からは、鮎を通して東京との繋がりが昔から形成されていることや、漁師さん同士の出会いのきっかけが生まれていること。