学生レポートvol .7|【2024年1月号】宗田節のつくり手から感じたこと

今号は高知大学院の柳原伊吹さん、高知大学社会協働学部の田中孝樹さん、松原彩耶香さんが取材に同行してくれました。
学生の立場からまなざす食の生産現場をレポートとして掲載します。

宗田節のつくり手から感じたこと

今回のインタビューでは、宗田節づくりを受け継いだ島谷さん夫婦からお話を伺いました。
島谷さんのお話で印象的だった点は2つあります。

1つ目は宗田節へのこだわりです。
「宗田節へのこだわり」という点で魅力的に感じたのは、土佐清水の宗田節へのこだわりと伝統を受け継ぐということへの思いでした。
島谷真矢さんは宗田節の美味しさに惹かれて大阪から高知へ移住したと伺いました。
その理由は、添加物ではなく美味しさを生み出す宗田節に惹かれたからだとそうです。
具体的には「サラダにかけるだけ」「インスタント味噌汁に入れるだけ」これだけで味が変わるそうです。
実際、インタビュー中に飲んだ出汁は、宗田節にお湯を入れるだけでお吸い物が出来上がるほどでした。

宗田節にお湯を注ぐと体の芯から温まる出汁が堪能できる

島谷さんは、こうした物が消えていくことはあってはならないと言う思いから移住に踏み切ったそうだ。
また、どの宗田節でもこのダシが出るものではなく丁寧に内臓や頭を取り除き油の少ない宗田節(土佐清水の宗田節)だから雑味の少ないストレートなうまみが出るとおっしゃっていた。
こうした宗田節の魅力と語りを後生に伝えていくと言う気迫に感銘を受けました。
また、土佐清水の宗田節に対して強い思いを持っている島谷さんですが、作り方についても丁寧に学ぶ姿勢が印象的でした。
以前は食品会社で働かれていたことから、全くの素人で宗田節づくりに臨んだそうです。
しかし、作り方については先代の武政さんに教わりながら茹で方、天日干しの方法、宗田節の見分け方について身につけてきたそうです。
工程の中で丁寧に内臓や頭を取りにぞく事や完成した節も限りなく脂の少ないものを見抜くということが土佐清水の宗田節を作る上での重要なポイントだそうです。
こうした工程を身につけるには5年以上必要だとおっしゃっていた。
また、こうした技術は先代の武政さんから引き継いでおり観察ややり方を見ながら学んできたとおっしゃっていました。
こうした品そのものへのこだわりと伝統的な作り方へのこだわりや学ぶという意思に大変感銘を受けました。

2つ目は宗田節の可能性を拡大させるための施策です。
ダシが生まれる工程から食べる所まで届ける体験コンテンツの開発と、日本のダシを日本国内だけではなく世界の料理と掛け合わすと言う施策をとっている点は特に魅力を感じました。
宗田節は鰹節と比べると認知はすごく少ない状況です。しかし、ふりかけや食品には隠れた味として含まれているものです。
こうした日本の味を広く広めていく、知ってもらうために工程から見学でき食べるところまで体験できるコンテンツが実際に提供されており商品を販売する店舗もオープンされていました。
この取り組みは、宗田節と言う魅力を伝える意味と土佐清水という土地で育まれた文化を残すという意味で重要なことだと思いました。
次に、日本の食だけではなく世界の料理とも合うことを島谷さん達が日常の家庭の食事などから実験しているとおっしゃっていました。
様々な所で試行錯誤を行い広げていこうとしている歩が本当に後生に残そうという意思を感じるものがありました。島谷さんの取り組みは、近年6次産業化など呼ばれる方法です。
こうした隠れた魅力を後生に伝えていく実践や取り組みをしている姿を応援し続けたいと思いました。

後方左より女将さん、島谷早苗さん、真矢さん。前方左より松原さん、柳原さん、田中さん(高知大学社会協働学部)