編集部レポートvol .4|【2023年7月号】豆道楽|豆腐

愛媛県西予市は日本ジオパークに認定され、地域内の標高差は約1400m。
海も山も有した大地は4億年もの時間をかけて形成された自然のたまものです。
漁業、農業、酪農と幅広い食の生産現場である西予市の中でも「豆道楽」は平野部の宇和町に位置しています。

朝7時過ぎ、町の中心部から県道237号線を南に走ると「豆道楽」の工場兼販売所が見えてきます。入口に掛かる暖簾は、真新しくてどこか誇らしげにはためいています。
「これはね、おろしたてなんです。地域のデザイナーさんにお願いして作ってもらいました」
そう声をかけてくれたのは「農業法人 豆道楽」の代表・渡邊智幸さん。
2011年にUターンすることになったきっかけは父・邦廣さんの存在でした。
「父には後継者も居なかったし、自分も何になりたいか悩んでいた時期で。とりあえず動かないよりは何かしていたくて進学先の広島から帰ってきました。」
父に大豆づくりと豆腐作りを教わり今年で12年目。現在は代表を引き継ぎ、従業員に自らが教えながら豆腐作りをしています。

毎朝5時から始まる仕込み作業

 

原料の大豆(フクユタカ)は、前日から浸水しふっくらときれいな黄金色に

 

「もともと父はイチゴ農家をやっていました。でも、周りと同じように出荷しても評価されるのは『個人の努力』ではなくて『共同販売している地域の農家としての平均点』だと感じるようになった」といいます。
だからこそ、父・邦廣さんが22年前に立ち上げた「豆道楽」では、大豆や小麦の栽培だけに留まらず加工品にして付加価値をつけることに着目しました。
それまで豆腐作りの経験はなく10軒ほどの豆腐店をまわりすべて独学だったそう。智幸さんの代になり製造方法を見直したことで、より味ややわらかい食感に磨きがかかったといいます。
その甲斐あって今では、地域の学校給食で子どもたちが食べていたり、旅館の料理長らが見学に来てメニューに採用されるなど繋がりが広がっています。

地元の小学生の工場見学も行っている

 

現在は智幸さんを含め総勢11名のスタッフで、農作業から豆腐製造まで一貫して行っています。
「僕たちは農家であり、豆腐屋でもあるんですよ。だから自分たちで育てた大豆がどうすればいちばん美味しい状態になるか理解しているし、より深く理解したいと思えるんです。もし豆腐屋専業だったら『いかに効率的に多く生産するか?』、『どうすれば多くのスーパーに置いてもらえるか?』っていう視点ばっかりになってしまったかもしれません」という言葉からは、農家として仕事に取り組むことへの誇りが伝わってきます。

「まさに二足のわらじ、ですね」と誰かが言うと、笑ながら「いえいえ、うちは麦やらブドウやら他にも色々作ってますよ」と二足どころではない驚きの事実が。

大豆・麦・ブドウ・米・蕎麦…豆道楽が管理する畑は約2,500アールに広がり、大小200ヶ所以上点在しています。その理由は、ここ数年で近隣農家の多くが高齢化で畑じまいをしたそう。
「近くのじいちゃん、ばあちゃんが『ここ使ってええぞ』と言ってくれて。そのまま耕作放棄地になって荒れ放題になるのもなんだか悲しいじゃないですか。だから畑を借りて、作物をつくったり、昨年からはひまわりを植えて花畑にしています」。
ひまわりには、畑に必要な窒素をたくわえてくれる緑肥としての役割もあります。実際、工場の裏手は一面ひまわり畑。今年は10ヶ所以上の畑にひまわりを植え、美しい花が地区のあちこちで咲き誇ります。地元の方により楽しんでもらえるようにと、手づくりの「ひまわりMAP」を店頭で配っているところからも、豆道楽の地域を想う気持ちが伝わります。

渡邉さんの言葉の一つひとつに、つくり手としてのまっすぐな思いが込められている

「農業って地域の風景を作る仕事だと思うんです」と力強い言葉で語る智幸さん。
年々農家が減っていくなかで、ひと昔前とはきっと変わってしまった「地域の風景」。
それでも今は智幸さんの手によって、この地に新しい「地域の風景」が作られている途中なのかもしれません。

今年は20万本のひまわりが咲いている

 

愛媛大学生の豆道楽取材レポートはこちら

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農業法人 有限会社豆道楽
住所:愛媛県西予市宇和町明石1486
電話:0894-62-1022
営業時間:8:00~17:00
定休日:水曜日・日曜日 ※悪天候時は休業